香典のお札の向きはどうするのが正解?知っておきたい葬儀のマナーと包み方


お通夜や葬儀に参列する際、避けて通れないのが「香典(こうでん)」の準備です。急な知らせに慌てて準備をすることもありますが、その際に意外と迷ってしまうのが「お札の向き」や「入れ方」ではないでしょうか。

香典には、お祝い事のご祝儀とは真逆のルールが存在します。故人への哀悼の意を表し、遺族に対して失礼のないようにするためにも、正しいお札の入れ方とマナーを分かりやすく解説します。


1. 香典に入れるお札の「向き」と「裏表」

香典におけるお札の入れ方には、「悲しみで顔を伏せる」という意味や、突然のことで「準備をする余裕がなかった」というニュアンスが含まれています。

お札の「裏表」について

香典では、お札の**「裏」が袋の「表(正面)」**を向くように入れるのが一般的です。

  • お札の表: 肖像画(福沢諭吉など)が描かれている面

  • お札の裏: 肖像画がない面

つまり、香典袋を開けたときに、**肖像画が見えない状態(裏側が見える状態)**にするのが正しいマナーです。これには「顔を伏せて悲しみに暮れる」という意味が込められています。

お札の「上下」について

肖像画の位置を上下のどちらに持ってくるかについても、地域や宗派によって諸説ありますが、一般的には**「肖像画が袋の底の方(下側)」**にくるように入れることが多いです。

  • 理想的な向き: 袋の表側に対してお札を裏返し、かつ肖像画が下にくるように入れる。

これにより、袋からお札を取り出した際に、肖像画が最後に現れる形となります。


2. 新札はNG?お札の状態に関する注意点

香典に使うお札は、何でも良いわけではありません。お祝い事とは異なる「葬儀ならでは」の配慮が必要です。

基本は「旧札(使用感のあるお金)」を使う

香典には、新札(ピン札)を使わないのが古くからの慣習です。新札を包むと「不幸を予測して用意していた」と捉えられ、失礼にあたるとされていたためです。

  • 新札しか手元にない場合は?

    もし新札しかない場合は、あえて一度真ん中で折り目をつけてから包むのがマナーです。極端にボロボロである必要はありませんが、「急いで駆けつけました」という気持ちを示すために折り目を入れましょう。


3. 香典袋(中袋)への入れ方と書き方

香典袋には、外袋の中に「中袋(なかぶくろ)」がついているタイプが多くあります。

中袋へのお札の入れ方

中袋がある場合も、上述した通り「裏向き・肖像画が下」の向きでお札を入れます。複数枚入れる場合は、すべてのお札の向きを揃えることが大切です。

金額の書き方

中袋の表側中央には、包んだ金額を記入します。この際、数字は「壱(一)」「弐(二)」「参(三)」「萬(万)」といった旧漢字(大字)を使うのが正式なマナーです。

  • 例: 5,000円の場合 → 金 五阡圓

  • 例: 10,000円の場合 → 金 壱萬圓

裏側には、自分の住所と氏名を記入します。これは、遺族が後で整理(香典返しなど)をする際に、誰からいくら頂いたのかを正確に把握できるようにするためです。


4. 偶数は避ける?金額相場とタブー

香典に包む金額にも、避けるべき数字があります。

  • 「死」や「苦」を連想させる数字: 「4」や「9」が含まれる金額は避けましょう。

  • 偶数の枚数: 「割り切れる=縁が切れる」という意味に繋がるため、偶数は避けるのが一般的です。ただし、近年では「2」については「2万円」として包むケースも増えていますが、迷った場合は「1万円」や「3万円」など奇数の金額にするのが無難です。


5. 袱紗(ふくさ)の使い方も忘れずに

準備した香典袋をそのままバッグやポケットから取り出すのはスマートではありません。必ず「袱紗」に包んで持参しましょう。

  • 色: お葬式では、紺、グレー、紫などの「寒色系」または「暗色系」の袱紗を使用します。※紫色は慶弔どちらでも使えるため、一つ持っておくと重宝します。

  • 包み方: 慶事とは逆に、左開き(左側に重なりがくるよう)に包みます。


まとめ:心を込めた準備を

香典のお札の向きや入れ方は、一見細かく感じられるかもしれませんが、そのすべてに「故人への敬意」と「遺族への配慮」が込められています。

  1. お札は「裏向き」で入れる

  2. 肖像画は「下」に向ける

  3. 新札には「折り目」をつける

この3つのポイントを意識するだけで、失礼のないしっかりとした大人の振る舞いができます。悲しみの中にいるご遺族に対して、あなたの弔意が正しく伝わるよう、落ち着いて準備を進めてください。

次に、実際に香典を渡す際の「言葉添え」や、受付でのマナーについても詳しく確認しておくと、より安心です。